2009年10月28日水曜日

10月28日: 驚愕の事実

病識(びょうしき)とは、ある人が病的な状態にあることを認識している状態のことをいう医療用語です。臨床では「病識がある」とはあまり使わず、病的状態なのにもかかわらずそれを認めない時に「病識がない」と使うことが多いです。

まあ、私が専門としている慢性の痛みの患者さんの場合には、むしろ病識がありすぎることが多いような気もします。

以前の病院で実際にあった話ですが、診察室に入っていらして椅子に座るやいなや…
患者さんA(以下Aさん):「先生。先生の言ったとおりにしたら、かえって腰痛が悪くなっちゃいましたよ!」
私:「え?私なんて言いましたっけ?」
Aさん:「私の腰痛は、基本的には筋肉の痛みだから、毎日しっかり動かしなさい…って言ったでしょ?」
私:「ああ、そうねェ。『とりあえず、まずは身の周りの事を始めてごらん』って話したねえ」
Aさん:「そうでしょ?で、身の周りのことを始めたんです。そしたらひどくなった!」
私:「具体的に何をしたの?」
Aさん:「腰痛がひどくなってから、何年間かやってなくて気になっていたので、網戸を洗ったんです。」
私(網戸洗うのって「身の周りのこと」か?):「それはちょっときつい仕事から始めたねえ…。でも、網戸洗いができたくらいだから、だいぶ腰痛は良くなってきたのだね?!」
Aさん:「そうですか?でもね、家中の網戸洗ったら、その翌日から腰の痛みがひどくて、前よりひどくなったんです!」
私:「家中のって、何枚洗ったの?」
Aさん:「22枚」
私:「………」
この場合、病識よりも「常識」の範疇に入るかもしれません。
まあ、東京近郊で22枚も網戸のある家に住んでいる事自体が、すでに常識の範囲を超えているのかもしれませんけど…。

一方、病識がないことで困るのは、アルコール多飲(依存まではいかない)の患者さんや糖尿病の患者さんの一部です。慢性疼痛の合併症として、時々、遭遇します。
以前も、HbA1cが12とかいうとんでもない数値の患者さんに(もちろん糖尿病専門医にかかることを薦めたのですが、忙しいことを理由に中々かかってくれないので)、「せめて食事に気をつけて、高たんぱく低カロリーのものを食べるようにした方が良いですよ」とアドバイスしました。すると、それ以来毎晩白身魚(フグ、鯛、ヒラメなど)の刺身を山ほど食べていた、というウソのような話もありました…。

で、先日、河村先生と話していたときのこと。
河村先生:「北原先生は、とにかく糖尿病とメタボの治療のために、運動と減量が必須なんですから…」
私(愕然として):「え?僕は治療のためにここに来ているの?」
河村先生(びっくりした表情で):「……そうですよ!何のためだと思っていたのですか??」
私:「……てっきり、健康増進のため……」
河村先生(かなりあきれた雰囲気で):「先生、HbA1c 7.5、BMI 30以上の患者さんがいたらなんと診断します?」
私:「糖尿病と病的肥満!」
河村先生:「……それが先生ですッ!」

実は、私も病識が全く欠如していた…ということが最近わかりました!…ってオイ>σ(^_^;)
先週は急用ができたため1回しかDoctor's Gymには行けませんでした。

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